・・・戦争を避けんとするなら、軍備を撤廃すべきであるが、近頃の国と国との対立では、相手の軍備よりもさらに強大な軍備を持つことが、戦争を避ける方法であるという驚くべき例外も現れてきた。・・・戦争を激発する根本はやはり国家である。国家と国家の対立が軍備の拡張となり戦争を起こす原因となる。世界から国家というものがなくなって、・・・国の代わりに県とか郡を置く。ちょうど日本の明治維新当時における廃藩置県の如く、あるいは各州からなるアメリカ合衆国ができた如く、世界というものが一つの国家になる。もしくは世界が一家になってしまえば、強大な軍備の必要もなく、したがって戦争の起こる心配もなくなる。
私は、軍備または武装というものを、各国とも極最小限度の、すなわち今の警察予備隊の程度のものとし、世界から戦争をなくするための理想として、世界政府または世界国家とも称すべき「世界連邦」ということについて、真剣に考えておる。・・・世界が一つになれば、各国共有の簡単な軍備が一つあればよい。各国には殺人や強盗を取り締まるための警察官か、あるいは内乱などの勃発に備えて警察隊のようなものがあればよい。(私の世界連邦案は単に軍備の問題ばかりではない。法律も、通貨も、言語も、教育も、居住も、暦法もことごとく共通なものが用いられ、風俗・習慣・文化等は各々尊重せられる。経済的な負担は極めて軽少で済み、一切の便利重法を享受し、平和な人間生活を営むことを理想とする。この理想を拒むところの、国家至上主義説、選民思想、人種的偏見、政体の不画一、経済イデオロギーの相違、国家的利己心、唯物論等は相容れぬ事はもちろんである)
尾崎行雄『わが遺言』(昭和26年)、『尾崎咢堂全集第十巻』287頁より。




