世界の土地と資源は、全人類のために利用せらるべきである。この地球は、独りアジア民族のために創造されたものでないと同じく、ヨーロッパ民族のためにつくられたものでもない。人類はすでにこの真理を理解し始めており、時代の進歩するに従って、よりよくこれを理解するようになるであろう。この世界的認識に対するおもな障害は、各国が、富と権力において他国を凌がんとする狭隘な野心をもつことである。この野心が各国を支配しているかぎり、世界的平等への進歩は行われない。・・・
孤立主義や門戸閉鎖主義は、広大な領土と巨大な資源を有する英国や米国、或いはソ連や中国などには可能であるが、これらの国々とまるでちがった環境にある日本には適しない。日本は、富と人との世界的交流をはかり、『門戸開放政策』の先導者になる方が有利である。この目的を達するには、日本に高尚にして神聖な精神を注入しなければならぬ。かくして日本は、弱小民族を援助することによって、偉大なる正義への道を歩むこととなろう。
これこそ世界を救済するのみならず、日本を救う道である。日本の運命は、日本がこの方向をとることに成功するか否かにかかっている。現在の日本は、生死の関頭に立っている。日本は小国の先頭に立って、正義への道を進まんとするか。はたまた大国の進みつつある狭い道にふみこんで、彼等とその運命を共にせんとするか。
尾崎行雄『墓標に代えて』(昭和7年)より。




