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尾崎行雄について

『本当の人間をつくる教育』

・・・今までは教育までが、軍閥や財閥のために、天皇のためにという名目のもとに、いろいろな偽りや迷信で歪められていた。だからそれは人間に仕上げる教育ではなくて、むしろ人間を奴隷にする教育、鳥や獣にする教育であったのだ。それでその結果、自分が何であるかを知らない、人間としての魂を持たぬものができあがったのだ。

・・・諸君の生命や財産は誰のものでもなく、自分のものである・・・それと同じように、諸君が学校で教育を受けるのも、自分のためであるのだ。自分を人間らしい人間、鳥や獣と違った、本当の人間にするためであるのだ。自分のためといっても、何もかも自分さえよければよい、人の迷惑などはかまわないというのではいけない。それではまた鳥や獣になってしまう。自分を本当の人間にし、人間らしい生活をしようというのには、人にもそうしなければだめだ。

今、さかんに自由という事が言われているが、自由もその通りで人の自由を尊重しなければ、自分の自由は失われる。自由はわがままとは違う。だからお互いの自由を尊重し合うため、法律や義務やその他のきまりを守らねばならぬのだ。英国人は、非常に自由を重んじる国民であるが、またよく法律を守る国民でもある。どうしたらよく法律を守れるかと考える国民だ。日本人は、どうしたらよく法律をくぐってうまいことができるかと法律をくぐることを考える国民だと言われていた。これは本当の人間をつくる教育が行われていなかったからである。今われわれは、奴隷から解放されて、自由のある独立した人間となったのであるが、はたして、皆本当の人間になり、人間としての魂を取り戻すことができたであろうか。
 

尾崎行雄『わが遺言』(昭和26年)、『尾崎咢堂全集第十巻』345頁より。