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尾崎行雄について

『有権者中心の政治』


民政維新は正しい選挙から始まる。正しい選挙こそ民政維新の土台である。もしこの土台が崩れれば、立憲政治の機能は何から何まで将棋倒しに倒れてしまう。
・・・立法府中心の政治ということは、選挙中心の政治ということである。選挙中心の政治ということは、とりもなおさず有権者中心の政治ということである。それなのにわが国の有権者の多数はまだ自分の一票に憲政を活殺する程の力があることを知らない。その尊い理由を目で読み、耳で聞いても、それほどの値打ちがあるものとはどうしても信じられない。そこで、「頼まれたから」「金をくれたから」「ごちそうになったから」「義理があるから」いれてやろう。甚だしいのは「棄権をするとうるさいから」「迷惑だがいれに行こうか」と、選挙権を厄介者扱いにするものさえある。我が憲政のふるわない病原は、全くここにあると思われる。

・・・国民生活の幸不幸は、全く法律の出来具合いかんで決まる。・・・いかなる場合にも、絶対に国民を裏切ることのない法律制定者(立法府)をつくるか否かを決する力は、一票の選挙権である。この一票こそ人間の生命財産その他の権利自由を確保する最後唯一の自衛権であることを知らなければならない。

 

尾崎行雄『民主政治読本』(昭和22年)、『尾崎咢堂全集第十巻』64頁より。